平成19年12月25日火曜日

神戸大シンポのニュース

2007年12月25日に神戸新聞朝刊21頁で報道されました。内容はネットでも報道されておりますので、ここで転載。

http://www.kobe-np.co.jp/news/bunka/0000781708.shtml

中年も使う末尾上げ 神戸大で「話し言葉」シンポ

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日本語の話し言葉の特徴について研究成果を述べる発表者=神戸市灘区六甲台町、神戸大

 学校で習う文法は、主に書き言葉についての法則だ。しかしわれわれは日常会話で、イントネーションや表情など、文字には現れないさまざまな要素を総動員し、コミュニケーションを成立させている。日本語の音声言語(話し言葉)に関する国際シンポジウムが、このほど神戸市灘区の神戸大で開かれた。(武藤邦生)

 二〇〇七年度から四年間の計画で行われる研究プロジェクト「人物像に応じた音声文法」(代表者=定延利之・神戸大教授)の途中経過報告などとして開かれた。

 筑波大の澤田浩子講師は、被験者の了解を得て録音した、計百九時間分の会話を分析。「○○しているしぃ」「○○とかぁ」のような末尾上げの発音は、一般的に若い女性の話し方とされ、時に“非難”の対象にもなったりもするが、「中年男性も、けっこう使っている」。

 一方、「(スー)いやー、それはですねえ…」というような、話しだす直前の空気すすりは「おじさんぽい」イメージがあるが、実際は若い女性にもみられるという。

 また神戸大の朱春躍教授は医療機器の磁気共鳴画像装置(MRI)を用いた研究を紹介。口の中の動きなどが動画で観察でき、発声のメカニズムの解明に役立つという。

 例えば、日本語の「ウ」の発音は英語や中国語に比べて、唇をあまり丸めないとされてきた。だが発音時の動画を分析すると、「唇の形状は本質的な問題ではない」。むしろ舌を盛り上げる場所がポイントで、中国語や英語に比べ、口内のかなり前のほうにあることがわかったという。

     ◇

 代表者の定延教授は、道を尋ねられたときなどに発する「さー、この辺りにはないですねえ」の「さー」を検討した。

 「さー、あそこにあります」という言い方は、おかしい。この言葉の後には、尋ねた人の期待に沿わない答えしかあり得ず、「さー」と言っている時点で話し手には「ない」という“検索結果”が明らかだ。意味するところは「私は今、やっても無駄な検討をしている最中です」といったところだろうか。

 「おちょくり」としか思えない言葉なのに、この「さー」があることによって、逆に丁寧な印象を与える。その理由について、定延教授は「『ダメモト』で検討してみせるという、努力が相手に伝わるから。コミュニケーションの場においては、知識を伝達するだけでなく、実際にしてみせるということが極めて重要だ」と述べた。